堺の技

線香

堺の技「線香」
堺いちでは職人の知恵と経験が生き、匠の技が支える商品を販売しています。

工場に入る前から、馥郁とした空気に包まれました。線香の香りはどこか懐かしく、心を穏やかにしてくれます。天正年間(16世紀)には中国から製法が伝わり、堺ですでに製造されていたとされるほど長い歴史を誇ります。技を受け継ぎ、機械化も取り入れ、伝統の中で進化してきました。
タブの木の葉、枝、皮、芯を粉状にしたタブ粉に、沈香や白檀、丁子などの天然香料を、家伝の処方で調合し練り上げた原料が、機械を通して押し出されてきます。幾筋もの細い糸状のものを木の盆で受け、竹べらで切る「盆切り」。それを右手の竹ベラですくい、手の甲に乗せて、乾燥板へと移し並べていく「生(なま)」という作業。重なったものや途中で切れた線香を慎重に取り除きます。細く、長く、柔らかいものを、つぶさぬように、重ならないように扱う、手の技。リズミカルに、スピーディーに、よどみなく続けられていきます。
板からはみ出した部分を切り、必要なサイズに切っていく「胴切り」。丸いカッターでなんと半分だけ切るときも。「約2mmの径なら半分の1mmまで刃をいれて止めます。力を入れずすっと切るだけです」と職人さんは語りますが、微妙な力加減は高度な技ならではでしょう。線香に曲がりは許されません。ある程度乾燥した時点で、すき間を詰めて曲がりを防ぐ「板寄せ」。板を両手で持ち、一瞬、ふるうだけ。この作業が一番、難しいといいます。「化学糊を使わず、木の粘りだけですからもろい。乾燥してすき間ができると曲がってしまいますから、寄せてぴたりと揃えます」。
線香づくりは一見するとどれもシンプルな作業です。シンプルだからこそ難しい。手で、身体でそのコツを会得していくのでしょう。仏事やお墓参り用だけでなく、今や部屋の癒しの香りとしても親しまれている線香。芳香の中に手技が息づいています。

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